犬好きと猫好き②

犬好きと猫好き①の続きです。

 犬がかわいいのか、いやいや、猫のほうがかわいいのか。さてさてどちらなのでしょう?

 答えはどちらでもありません。犬や猫がかわいいのは、実は犬や猫がかわいいのではなく、あなたの心の中に「犬はかわいい」とか「猫がかわいい」と思う心があるからなのです。例えば、本当にその犬がかわいのなら、100人が100人「犬がかわいい」というはずですよね。でも、実際は犬を嫌いな人はたくさんいます。子供の頃に犬にかまれたという体験がトラウマになっているというのはよく聞く話です。怖い犬をかわいいと思う人はいませんよね。

 私の知り合いには、子供の頃、飼っていた猫が突然、自分の身体を駆け上がってきて、その体験が忘れられず、いまだに「猫が嫌いだ」という人がいます。

 私の場合は、犬も猫も子供のころから飼っていたのですが、最初の犬は隣の家の叔母が飼っていた2匹のスピッツで、うるさいし、臆病ですぐに威嚇してくるので、少し苦手でした。

 次に飼ったのが、クロとシロの柴犬でした。小学5年の時、駅前にトラックかバスか忘れたのですが、行商のようなペット売りが来て、母親に連れて行ってもらいました。その子犬がかわいかったので買ってもらい、「クロ」と名付けました。血統書付きという事でした。血統書付きなので、小型犬の柴犬は小型のままのはずなのですが、年月が経つと「クロ」は中型犬並みに大きくなりました。今から思えば、血統書は偽物だったのですね。田舎だから簡単に騙せたのでしょう。ちなみに母は無類の犬好きでしたが、子供の頃に飼っていた愛犬「メリー」が高校生の時に亡くなって以来、あまりの悲しさに、ペットを飼うことを封印していたことは、後で知りました。「クロ」は、けっこう気が強く、気高く頼もしい犬でした。一度、首輪が外れたシェパードが襲い掛かってきた事があったのですが、「クロ」は決して負けてはいなかったと、目撃した今は亡き父から聞きました。

 「クロ」を飼って2年目ぐらいに、犬をもう一匹拾いました。茶色の耳が垂れた小型の雑種で「ロン」となづけました。この「ロン」は育ってきた環境のせいなのか、本当に憶病で、少しの物音などに異常なほどにビクつきます。自分自身、気が弱かった私は、この「ロン」が、自分を見ているようで大嫌いでした。いつもビクビクしている「ロン」を見ているとイライラがとまりませんでした。近くに飛んできたスズメにもビビっているくらいです。カラスが鳴いても、「ビクッ!」とします。こんな「ロン」を見るのに嫌気がさした中学1年の私は、ついに、あることを決行します。